第192章

次の瞬間――三浦宏明の動きが、「不意打ち」が決まる寸前で、ぴたりと止まった。完全に、固まった。

酒井初音はそれを見逃さない。振り向きざま、反手の左フックを叩き込む。勝負は一瞬、刹那の遅れが命取りだ。

三浦宏明が止まった、その一秒で――今夜の試合は、もう決していた。

初音は振り返った拍子に、彼の狙いが「ボクシングの範疇」ではないと理解する。あれはムエタイの崩し方。肘や首相撲の流れに繋げる、汚い抜け道。

胸の奥に、名もない怒りがじわりと広がった。

次いで、初音の拳が雷雨みたいに降り注ぐ。

ドン、ドン、ドンッ――。

三浦宏明は下がるしかない。ロープ際まで追い詰められ、最後は床に押し倒...

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